『カールじいさんの空飛ぶ家』鬱なチャールズ・マンツはかわいそうな悪役

じいさんが家に風船をつけて飛ぶ痛快なディズニーのアニメ映画『カールじいさんの空飛ぶ家』。

そこに出てくるチャールズ・マンツという悪役が、かわいそうという声を聴く。鬱という話もある。

『カールじいさんんと空飛ぶ家』の簡単なあらすじを追いながら、チャールズ・マンツが本当にかわいそうなのか見ていこう。

『カールじいさんと空飛ぶ家』鬱なチャールズ・F・マンツはカールの憧れの冒険家なのにかわいそうな理由

カールじいさんは旅に出て、チャールズ・F・マンツ(Charles F.Muntz)という冒険家と戦う。

チャールズ・マンツ(Fは省略。以下同)は、飛行船アドベンチャー号で暮らしている93歳の老人。1930年代に活躍した冒険家だ。

彼の決めセリフは「冒険はそこにある!」

 

チャールズ・マンツは、カールじいさんが子供の頃からの憧れの存在だった。

カールじいさんが旅に出た理由も、チャールズ・マンツの影響だった。

というのも、カールじいさんの旅の行先は、チャールズ・マンツが探検して消息を絶ったというパラダイス・フォールという滝。その滝の上の崖に、亡くなった妻エリーが夢見ていたように、家を持っていく、それが旅の目的である。

妻エリーも冒険好きで、冒険ブックというノートにチャールズ・マンツの写真を張っていて、いつか二人で行こうと約束した旅に、カールじいさんは来たのだった。

二人に憧れの冒険家チャールズ・マンツ。

なのに、どうして悪役なのだろうか?

『カールじいさんの空飛ぶ家』鬱屈したチャールズ・マンツ執念の70年の人生がかわいそう

チャールズ・マンツは、かつて、南米のパラダイス・フォールで伝説の怪鳥を発見した。と、学会に発表した。

しかし、学会ではその発見を偽物と断定した。マンツの冒険家協会の会員権をはく奪してしまったのだ。

それからマンツは、その怪鳥を70年間も、探し続けている。

マンツは、会員資格を奪われたことだけでなく、嘘つき呼ばわりされたことを、とても怒っていた。

その後70年もの間、嘘つきよばわりした人達を見返すために!嘘つきと呼ばれた汚名を晴らすために!怪鳥を追い続けている、見返す為に生きてきた70年。

しかし考えてみよう。

70年とは現在93歳から逆算すると、

チャールズ・マンツは23歳の若い時から、老年期に入ってからも30年もの長い年月。これは人生のほとんど

こんなに長い年月を、人を見返すためだけに生きてきた人生。これを哀れといわず何と言おう

彼を嘘つきと言った人は、今も生きているだろうか。嘘つきと言った人達は70年前の人達だ。

 

チャールズ・マンツは、怪鳥を捕まえることだけに執着している、93歳の頑固老人と言えるだろう。

この人生はかわいそうでもある。

『カールじいさんの空飛ぶ家』鬱なチャールズ・マンツは愛犬家でかわいそうな犬語翻訳機の発明

チャールズ・マンツは、犬の言葉を人の言葉にする犬語の翻訳機を発明した。

その翻訳機を、自分の犬達の首輪にして、自分の犬達と会話している。

彼は、愛犬家でもあるのだ。

家にしている巨大な飛行船アドベンチャー号には、犬のシャワー機が置いてあったり、

犬が乗るグライダーにパラシュートも付けてあったりして、マンツの犬好きがうかがえる。

また彼の人柄は、初対面のカールじいさんとラッセルに、最初とてもフレンドリーだった。

二人を飛行船の中に招待して、食事まで出してくれた。

どうやらチャールズ・マンツは、もともと良い人のようだ。

料理番の犬にも出した料理をほめたりして、悪い人には見えない。

翻訳機を付けたしゃべる特殊な犬達は、チャールズ・マンツの為に働く犬軍団である。

そんな中の1匹が、カールじいさんと少年ラッセルの旅の途中に迷い込んでくる。ダグという名前のゴールデンリトリバーの犬だ。犬語翻訳機のおかげで、すぐに打ち解ける。

 

この便利な犬語翻訳機は、本当にすごい発明だと思う。これだけで、チャールズ・マンツをすごいと認める。

それに、マンツと大勢の犬達が暮らしている巨大な飛行船の中に様々な便利な発明機械がある。

その中にはコメディ感たっぷりの、機械で動くブラシが犬を洗ってくれるシャワー機もあったりする。

チャールズ・マンツは、自分を認めさせるために怪鳥探しを続けているが、

この、犬語翻訳機という素晴らしい発明を、もし世の中に発表したら!誰もがチャールズ・マンツを認めるだろう。

そうしないマンツはとても残念で、哀れである。

『カールじいさんの空飛ぶ家』鬱なチャールズ・マンツの頑固な執着がかわいそうな最期に

犬好きのことでは、もう一つチャールズ・マンツが哀れなことがある。

初めに出てくる犬は、犬軍団の第1号ドーベルマンのアルファという名前の犬、一緒に登場するのがベータ、ガンマである。ギリシャ語のアルファベットの最初がアルファだ。続くのが、ベータ、ガンマである。犬軍団のトップスリーだ。

カールじいさんをご主人様と言い張る犬、ダグは、犬軍団の落ちこぼれだ。ドーベルマンなどのエリートと比べ、ダグはゴールデンレトリバーで戦闘軍団むきではない。

チャールズ・マンツの手下だったダグは、ラッセルやカールじいさんを助ける。

そうしてカールじいさんの鬱で頑固な執着をほどいていくのに対し、

ところがチャールズ・マンツは、犬達に愛されているのに最後は犬達があてにならない。

それでも一人で追いかける。しかし、それは、カールじいさんが怪鳥を取りに来たと思い込んでいるからで、本当は追いかける必要はないのだ。

チャールズ・マンツはその間違った執着で、追いかけなくともよいカールじいさんを追いかけて、

墜落死という哀れでかわいそうな最期になるのである。

『カールじいさんの空飛ぶ家』鬱なチャールズ・マンツの犬好きが怪鳥ケヴィン捕獲に不運でかわいそう

チャールズ・マンツが犬好きゆえに皮肉にも不運なことがある。

彼が探していたのが、巨大でカラフルな羽毛の鳥、怪鳥である。

カールじいさんと一緒に旅してきた少年ラッセルは、この鳥に偶然出会う。チャールズ・マンツに会う前である。

太っちょ少年ラッセルは、偶然、大きな鳥を見つけて、持っていたチョコレートのかけらをあげた。なんとその鳥は、チョコレートが大好きで、ラッセルの後を付いてくる。ラッセルは、なついた鳥にケヴィンと名前を付けて呼ぶ。ラッセルは探そうとしていたわけではないのに、怪鳥を見つけたもだ

そのケヴィンこそ、チャールズ・マンツが探し求めていた怪鳥だった。

チャールズ・マンツは怪鳥を無理やり捕まえて、飛行船の檻に閉じ込めた。

悲しいことに、マンツがもしケヴィンにチョコレートをにあげたくても、マンツは持っていなかった。チョコレートは犬には猛毒だから。

檻にとらわれていたケヴィンは、カールじいさん達が逃がす。一緒に逃げている時に、カールじいさんとラッセルを乗せて走った。

ケヴィンは実はメス鳥で、遠くの巣にひな鳥が沢山いた。ラッセルはそこに帰してあげたのだ。

 

マンツがチョコレートに縁のない犬好きなのは、皮肉な不運だ。

 

『カールじいさんの空飛ぶ家』鬱なチャールズ・マンツはみんな敵と疑う疑心暗鬼がかわいそう

チャールズ・マンツは、最初、カールじいさん達を親しげに向かい入れた。

彼の態度が豹変したのは、食卓で、マンツが怪鳥の絵で怪鳥のことを話した時の事。

ラッセルは、その絵が、旅の途中で出会ったケヴィンと名付けた大きな鳥とそっくりと、つい口走った。カールじいさんが慌ててラッセルを遮ろうとしたけど、後の祭り。

それまで親しそうにしていたマンツの顔つきが、一瞬で変わる。カールじいさん達を、自分が追っている怪鳥を捕まえに来たと、思い込む。つまり、自分の””と思い始めるのだ。

カールじいさんは、旅の目的をパラダイス・フォールの滝に家を持っていくことと話した。しかしマンツから、痛快な嘘と決めつけられた。

チャールズ・マンツは、恐ろしいことを話う。

これまで、測量士や草木の収集家などやってきたが、みんな嘘つきだったと言い放つ。つまり、来た人来た人みんなを、自分の怪鳥を見つける手柄を横取りするために来たと、決めつけているのだ。

そして、だからこうしてやったと、棚の上に並んだ探検ヘルメットを、一つ一つ、突き落とす。棚に並んだヘルメットは眼鏡のようなゴーグルが付いていて人の顔に見える。それが叩き落される。恐ろしい!

パラダイス・フォールという美しい絶景で、チャールズ・マンツはその恐ろしい事をしてきた。

その後、チャールズ・マンツが、逃げるカールじいさん達を何回も突き落とそうとする。そのチャールズ・マンツの顔は狂気に満ちていて、ちょっとしたホラーだ。

本作品はファミリー層向けの映画だから、どうもホラー的なのがしっくりこない。

それに、家が風船で飛ぶのはファンタジーだが、舞台は子供のカールとエリーが遊んでいるありふれた人間の世界。

そこにこのような狂暴な悪役は、とても恐ろしい。

マンツは怪鳥への執着が強いあまりにみんな怪鳥目当てと思い込んでしまっただけだ。

マンツの執着が生んだ、疑い過ぎ。そして、狂気の妄想。

悪役マンツの”疑心暗鬼”。

鬱と言っている理由である。

『カールじいさんの空飛ぶ家』鬱なチャールズ・マンツは多くの人を手にかけた極悪なディズニーディラン

マンツの最後は皮肉だった。

カールじいさんの家まで、カールじいさんとラッセルを追いかけていき、足に、たまたま風船の紐が絡みついたのだ。それで家の端から踏み外して、空飛ぶ家から落ちてしまう。

足に絡みついた風船数個と一緒に、雲海の雲の中に消えていく。あの墜落では助からないだろう。

皮肉なのは、チャールズ・マンツは自分が疑心暗鬼で多くの人の命を奪ったのと同じ方法で、自分の命を落とすはめになったことだ。

しかし、もしマンツが、疑心暗鬼でなくカールじいさんを迎えたなら、カールじいさんは敵ではないとわかったはず。そうしたら、カールじいさんの家まで追いかけていくことはなかったし、そこから墜落することもなかったはずだ。

疑心暗鬼の狂気で、思い込みだけで多くの命を奪った非情なチャールズ・マンツ。ディズニー・ヴィラン(悪役)の中でも、最悪の部類の凶悪な悪役だ。

『カールじいさんの空飛ぶ家』鬱でかわいそうなチャールズ・マンツの不幸は誰にでも起こりうる

ただ、筆者はどうしても考えてしまう。チャールズ・マンツは特別だろうか?

カールじいさんも頑固で、家の周りの工事の人を殴って怪我をさせた。家への執着が強いあまり、家を傷つける人を許せなかったからだ。マンツのように疑心暗鬼に支配され周りの人を悉く疑うのは、カールじいさんも同じだったかもしれない。

チャールズ・マンツの鬱な疑心暗鬼は、誰にでも起こりうるかもしれないと思うのだ。

カールじいさんは幸いなことに、ラッセルという純粋な少年が旅の友達になり、ダグという忠実な犬が助けてくれて、頑固な家への執着が無くなった。

大事に持ってきたエリーとの思い出の家より、ラッセルとダグが大事になったのだ。

 

※チャールズ・F・マンツの名前だが、かつてウォルト・ディズニーが作ったキャラクターの権利を奪ったチャールズ・ミントとよく似ているので、そこから作られたとも言われている。そのキャラクターとは”オズワルド・ザ・ラッキー・ラビット”というものだった。

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